月に沈む闇
第三章 『微睡む月の影』
  


第三章 『微睡まどろむ月の影』

第一話

 雲ひとつない突き抜けるような青く高い天空を、流麗な軌跡を描くように一羽の鳥が飛んでいた。
 しなやかな肢体を滑らせるように鳥は驚くような速さで天を翔け、少しの揺るぎもなく目的の場所へと向かっているように見えた。
 ラーカディアスト帝国のマセル公爵家が有する広大な領地イルマナの草原や馬場の上空を颯爽と翔け抜けて、前方に広がる大きな屋敷へとその目を向けている。
 そのまま立派な造りの大門の上空を過ぎ、美しい庭園の様相をみせる中庭へまわり込むように飛び進むと、その一角に柔らかな風に揺れる紅茶色の髪を見出して、鳥はどこか嬉しそうに『クォォ』と低い声を上げた。
「ああ。お帰り、ヤシャ」
 中庭をのぞむように備え付けられた広いテラスの手すりに長身を預けるように、ティーカップを持ったままぼんやりと外の景色を眺めていた青年は、空を見上げてにこりと微笑んだ。翡翠のような美しい翠の瞳がおだやかな彩を帯び、上空を舞う鳥に向けられていた。
「ずいぶんと草臥れてるみたいだな。おいで」
 テラスに備え付けられたテーブルにカップを置いて、青年が軽く左手を空に向けて伸べてやると、鳥は大きく翼を広げて一度旋回するように羽ばたいて、ふわりと差し伸べられた腕へと舞い降りる。
 薄墨色の美しい翼を折りたたむように青年の腕に止まり着いた鳥は、どこか和んだように、甘えるように、もう一度『クゥォォ』と鳴いた。
「少しも休まずカスティナからここまで翔んできたのか? ご苦労だったね、ヤシャ。それにしても……碧焔がリュバサを半日で落としたとはねぇ。ふふ……思った以上にやるもんだ」
 くすりと笑うと、青年……橙炎の騎士ミレザ=ロード=マセルは左前腕に乗せた鳥を己の方に引き寄せ、軽く目を細めた。
 主人からのねぎらいの言葉に、ヤシャと呼ばれた鳥は嬉しそうに身を寄せて、甘えたように肩口にくちばしをこすりつける。その口許に採れたての瑞々しい果実を持って行ってやりながら、ふと、ミレザの穏やかそうな美貌に不可思議な苦笑が浮かんだ。
「そうか。碧焔……彼が"カスティナの軍神ユーシスレイア=カーデュ"だったのか。それなら、湖底都市を落とすのは簡単だっただろうね。まあ、だからといってその功績に変わりはないけれど」
 まるで会話でもしているかのように、ミレザは鳥の目を見て首を傾ける。鳥は言葉を返すでもなく、カリカリと小気味の好い音をたてながら、主人が差し出してくれた果実を美味しそうにかじっていた。
 一見すると隼にも見える姿を持つこの鳥は、ラーカディアストの西方に位置するイルマナ地方にのみ生息する霊鳥で、そのイルマナを古くから領有してきたマセル公爵家の嫡子だけが唯一、しかも生涯でただ一羽のみ飼い馴らすことが出来ると言われている不思議な鳥だった。
 そしてこの霊鳥は人語を解し、"己が選んだ主人"とのみ思念によって会話が出来るともいわれ、イルマナ地方では神聖視されている鳥である。
 当然、現マセル公爵家の嫡子であるミレザ=ロード=マセルには、その霊鳥……幼い頃に飼い馴らし『ヤシャ』と名付けたこの鳥との意思疎通が可能だった。
 遠くで起きている出来事を把握するために、たびたびミレザはこの鳥を色々な場所へと派遣している。何よりも速い飛翔速度を持つこの鳥は、主人の期待を裏切ることなく、いち早い情報をいつも彼に与えてくれていた。
「おまえが今日ここにその報せを持ってきたということは、帝都に ―― 陛下にその報がもたらされるのは明日の深夜というところか。……シロが怒り狂うだろうな」
 ユーシスレイア=カーデュが親友の仇なのだと息巻いていた白炎の騎士にとっては、この報告は簡単には納得出来ないに違いない。彼の気性を考えれば、ひと悶着ありそうだとも思う。
「とうぜん緋炎はそのことを知っていたんだろうけれどねぇ……」
 ユーシスレイアを『碧焔の騎士』にと皇帝に推薦した炎彩五騎士の主座を務める男の、ひょうひょうとした顔を思い浮かべながら、ミレザは深い翠の瞳をやんわりと細めた。
 緋炎の騎士という男は、本当に物事や他人に対して執着を持たない人間なのだ。だが人の情というものが判らないわけではないとミレザは思っている。そうでなければ兵士たちの間で、ああも高い支持を受けるはずがない。五騎士の中で最も兵に人気があるのは緋炎なのだから。
 ただ、彼は本当に大切なもの以外にはあまり重きを置かず、興味を示さないのだろう。
 己の"信念"と"人情"を天秤にかければ自分の信念の方に軍配が上がる。その点では、緋炎も自分も似たような思考の持ち主なのだとミレザは思った。
 もし自分が緋炎の立場だったとしても、おそらくユーシスレイアを碧焔へと推薦しただろうと思う。このラーカディアストにとって、確かに"彼"は有意な存在だからだ。
「それにしても……私たちにも隠しているとは人が悪いにも程があるな、緋炎は。碧焔が功を立てた今、異議を唱えることも出来ないんじゃあ、シロも可哀相だ」
 相手を気遣うような優しげな言葉とは裏腹に、その目許にはどこか状況を楽しむような笑みが浮んでいた。白炎などがここにいれば、『無駄に爽やかな笑顔はやめろ』と言って不快がるに違いない。
「手がつけられなくなる前に、私も帝都に戻るとしようかな」
 今から戻れば、明後日の朝には帝都ザリアになんとか到着できる。ぎりぎり間に合うというところだ。
 報告を受けるその場にミレザが居なければ、怒り狂う白炎をなだめるのはおそらく紫炎ラディカの役目になるだろう。普段からのらりくらりと白炎の騎士で"遊んでいる"自分とは違って、一般的に『変わり者』だと知られる炎彩五騎士の中にあって、最も常識的と見られる紫炎の胃の方も心配だった。
「まあ……仕方ないね。急いで戻るさ」
 くすりと笑ってミレザは帝都のある東方の空を見やる。
 碧焔の騎士が兵を率いてラーカディアストの港を出立してからこの数週間。五騎士会議での言葉どおりに実家の領地に戻り、久しぶりの休暇を決め込んでいた橙炎の騎士も、のんびりとした穏やかな生活にそろそろ飽きが来ていたのかもしれない。その声はどこか晴れやかだった。
「なんだ、ミレザ。帝都に戻るのか? せっかく俺が帰ってきたというのに、おまえが居なくなるとは……つくづく縁がないらしいなぁ。俺とおまえは」
 ふと背後から苦笑するような声が聞こえて、ミレザはやんわりと笑みをたたえて振り返った。その聞き知った声が誰のものか、分からないはずもない。
 ラーカディアスト帝国の前皇帝ファレル=シア=フュションの実弟であり、現皇帝エルレアの叔父。そしてマセル公爵家の現当主の座につく男ラクル=トゥ=マセル。―― ミレザの父親だった。
「父上、お戻りでしたか。ひと月ほどもお留守だったとか。ルークが寂しがってましたよ」
 貴公子然とした微笑でミレザは父を出迎える。自分が一年ぶりにこの家に帰って来た時には既に父は出掛けたあとだったので、こうして顔を合わせるのは久しぶりだった。
「いや、おまえが来ていたのなら寂しがりはしなかったろう。あれはおまえによく懐いてるからなあ」
 からからと笑って息子の肩を強く叩くと、ラクルは楽しそうに褐色の双眸を細めた。
 普段は帝都に身を置いており、滅多にこのイルマナに在る家には戻ってこないミレザのことを、今年六歳になる異母弟のルークが心から慕っているということはこの屋敷に住む者で知らない者はない。
「でもやはり、兄と父では違うから」
 くすくすと笑いながら穏やかな瞳を細めて、ミレザは父の顔を見返した。けれどもすぐに、話題を変えるようにその深い翠の瞳に鋭い眼光を立ち上げる。
「ところで父上。……あなたがひと月も屋敷を留守にするほどだ。何か難しいことでもありましたか? 義母上もただ『お務めで』とおっしゃるだけで、どこに父上が行かれたのかご存知ないようでしたが」
「……ふむ。下手なことを言ってあまり心配させたくなかったのでな、あれには言わなかった」
 大らかに笑っていた表情を一変させて、ラクルは気難しげに眉間に深く皺を寄せた。出来ることならば冗談のように済ませてしまいたかったが、そうもいかなかった。
「まあ……おまえが来ていて良かったよ。俺からエルレアに使者を出す手間が省けたからな」
 ラクルは苦い笑みを口許に浮かべ、じっと息子を見やる。彼が皇帝を呼び捨てにするのは今に始まったことではないので、ミレザも特に気にはしない。
 ただ ―― 普段は豪胆という言葉が良く似合う父の、しかつめらしいその表情にミレザは僅かに眉をひそめた。何が起きたのかは知らないけれど、ただ事ではなさそうだというのは父のその様子だけでもわかる。
「ラーカディアスト……下手すりゃ世界全体に関わることだ」
「 ―― ああ、もしかして魔物や魔族が"勝手に"動き出したってことですか?」
 苦々しげで重い父の口調とは裏腹に、淡々とした表情で確認するようにミレザが首を傾げると、ラクルは「察しが良いな」と苦笑した。昔からこの息子は妙に察しが良すぎるところがあって、親であるラクルの方が辟易してしまうのだ。
「このところ彼らの意識や行動が変わってきていることは、緋炎も私も気が付いていたからね。カレンや陛下も、おそらく分かってるはずですよ。でも……」
 いったん言葉を切ると、にぃっとミレザはどこか危険な笑みをその美麗な口許に宿す。
「……陛下に敵対するのなら、排除するまでだけどね」
 普段は温和で優雅な雰囲気をもつこの息子が時々みせる、どこか空恐ろしいまでの狂気の笑みがラクルは理解できなかった。それが向けられるのは敵に対してのみだともちろん知ってはいるのだけれど、その表情を見ると背筋が凍るように圧倒されてしまう。
 虫も殺せないような優しげな美貌には似合わず、帝国最強といわれる炎彩五騎士のうちのひとり橙炎の騎士なのだから、圧倒されても当然だと言われればその通りではあるのだが……。
「詳しい話を聞きましょうか、父上。ここでは何だから、父上の執務室にでも参りましょう」
 先ほどの狂気染みた笑みが嘘のように、穏やかな微笑みを浮かべてミレザは父親を促すように手を伸べる。このテラスで話をしていたのでは、誰の耳に入って無用の混乱を招くとも限らない。
「……そうだな」
 ラクルは気をとりなおしたように軽く息をつき、ぽんっと息子の背を叩くように歩き出した。
 ミレザはくすりと笑うと、腕に休ませていたヤシャを軽く空に放ってやってから、父のあとについて部屋の中へと入っていった。


 苛々と、どこか落ち着かない様子で白炎の騎士は席についていた。
 大きな円卓をせわしく指で叩くその不機嫌そうな表情は気の弱い人間が見れば怖ろしさに震えだしそうなほどで、彼がひどく怒っていることは疑うべくもない。
 その白炎の騎士の向かい側の席には、何枚かの書類に目を通しながら紫炎の騎士ラディカ=ローセアが平然とした表情で座っていた。
 五騎士の公館であり『彩宮』と呼ばれるこの建物の中には、五人いるはずの炎彩五騎士のうち、まだ二人の人間しか集まって来てはいない。
 緋炎の騎士は皇帝に呼ばれ、今は皇宮に赴いている。橙炎の騎士はもう何週間も前から実家の領地に戻っており、気ままな休暇中だ。そしてもう一人……最も新しく炎彩五騎士の一人として任命された碧焔の騎士は、今はカスティナ王国への征途についている。
 だから、今はこの二人のみがこの部屋に居るのはおかしい事ではない。ただ ―― 白炎の騎士の不機嫌さは、あまりに異質だった。
「…………」
 今朝がた部下が持ってきた書類に目を通しながらも、紫炎ラディカは向かいに座る白炎の騎士、クォーレス=ジゼルの様子を伺うようにちらりと視線を上げた。白炎の騎士の気性が激しいのは百も承知しているけれど、ここまで露骨に怒気を表しているのは尋常ではないとラディカは思う。
 同僚の怒気が自分に向けられているわけではないのは確かだ。彼は目の前に怒気を向けるべき相手がいれば、それを押さえ込んで我慢などしていられるような性格ではない。
 だとしたら、いったい何に怒っているのだろうかと一瞬だけ考える。しかし、考えたところでその答えが自分に分かるはずもない。だからすぐに思考を放棄して、紫炎は目の前の書類に再び集中を向けた。
 今の自分にとっては、白炎の騎士の怒気よりもこちらの書類の方が興味深い存在だったからでもある。
 先日ラディカが視察がてらに立ち寄った北の街に、どこか不穏な噂が流れていた。気になって真偽を調べるように命じていた部下からの大事な報告書なのだ。今のうちにそのすべてに目を通し、必要ならばのちほど執り行われる五騎士会議で議題に載せて協議したかった。
「……おい、紫炎」
 円卓を叩いていた白炎の騎士の指の音が止み、ラディカを呼ぶ声がした。刺すような鋭く強い眼差しが、紫炎の金髪に黒のメッシュが入った頭部にじっと注がれている。
 先ほど白炎の様子を盗み見ていたことがばれていたのかもしれない。そう思いはしたものの、慌てる様子もなく紫炎ラディカは平然と書類から顔を上げた。
「なんですか?」
「……おまえはどう思う?」
 意外にも、白炎の声に怒気はなかった。ラディカの視界に入る白炎のその表情は、やはり先ほどと同じで不機嫌そうにしかめられたままだ。それなのに、口調はどこか戸惑った様子さえ感じられて、思わず紫炎はまじまじと白炎の顔を見つめてしまった。
「何が、ですか?」
 一切の説明もナシに突然『どう思うか?』などと問われても応えようがない。説明を促すように、紫炎はアメジストの瞳を同僚に向けた。読んでいた報告書は軽く揃えて円卓の上に置き、相手の話を聞く体勢に入る。
 それを見て、クォーレスは僅かにほっとしたように短く息を吐き出した。一人で怒気と戸惑いを抱え切れなくなって、紫炎に話を聞いてもらいたくなっていたのかもしれない。
「今朝……嫌な話を聞いたんだ。本当かどうかは分からない。昨日……俺の部下が偶然……耳にしたってだけの話だから……」
 いつもの白炎らしくもない、どこか歯切れの悪い口調だった。けれどもラディカはひとことも口を挟まず、先を促すように頷いてみせる。クォーレスは一度天井を仰ぐと、意を決したように紫炎の騎士ラディカ=ローセアの顔をじっと見つめた。
「碧焔が……新しいあいつの正体が『ユーシスレイア=カーデュ』じゃないかって……」
 口に出すのもおぞましいと言うようにクォーレスは唇を噛み締める。
「ラスティムが奴の招請に応えて主席幕僚となったから……そんなこと有り得ないとは思うんだ。けどさ……」
 ぐっと感情や言葉を呑み込むように、白炎は俯いた。
 その報告を部下から受けて、白炎は一刻も早く緋炎に事の真相を問い質したかったに違いない。けれども真実を知っているだろう緋炎はいまだこの部屋に現れず、イライラを募らせていたのだろうとラディカは推測した。
「ラスティムというと、ゼア=カリムの腹心だった彼ですよね? 確かナファスの海上戦で壊滅した『蒼海』ただ一人の生き残りの」
「……うん。ゼアが最期に遺した書簡を俺と陛下に持ってきてくれた奴だよ。ゼアの一番の腹心だった」
 それが ―― 新たに仇敵の部下になどおさまるはずもない。だからこそ"その話"は信じられなかった。しかし『絶対にない』と強く否定するには思い当たることも幾つかあって……今朝からイライラを持て余していたのだ。
「なあ、紫炎。おまえは……どう思う?」
 先ほどと同じ問いを、白炎は繰り返す。ラディカは一瞬考えるように瞳を閉じ……そうして真摯な眼差しを同僚に向けた。
「そうですね……。有り得ないことではないと、僕は思います」
 クォーレスが望んでいる答えとは正反対であろう返答を、あえて紫炎はするしかなかった。ここで気休めに「有り得ない」などと言ったところで、白炎のためになるとは思えない。それに ―― その話が本当ならば、いろいろなことに納得がいく。辻褄が、合うのだ。
 緋炎が彼を皇帝に推薦した時期も。新たな碧焔がいきなりリュバサの攻略に指名されたことも。碧焔の騎士の話す言葉の端にときどき混じる、カスティナ独特の発音も ―― 。
「そっか……」
 おそらくクォーレス自身の見解も、紫炎と同様のものだったのだろう。捨てたい考えを強化される形になって、明らかに気落ちしたように白炎は深い溜息をついた。
「白炎……」
 もしこの話が『本当である』と確認できてしまったならば、いったい彼はどうなってしまうのだろうか。その可能性が高いだけに、思わずラディカは心配になる。
 クォーレスが今は亡き碧炎の騎士……親友だったゼア=カリムに対していまだに強い想いを抱いているということは、彼の周囲にいる人間であれば誰もが知るところだった。
 五騎士最年少の白炎の騎士は、まだ二十一歳という若さだ。それに対してゼア=カリムは緋炎と同年。いま生きていれば三十一歳というところだ。親友とはいってもその年齢には大きな隔たりがある。
 幼くして親に捨てられていたクォーレスを拾い、いろいろと面倒を見てきたのがゼア=カリムだった。極言すれば、彼はゼア=カリムに育てられたのだと言っても良い。
 彼が長じてからは親友であり……そしてまた深い家族でもあったのだ。
「白炎、もうじき緋炎も戻ってきます。それまでは ―― 確実でないことを思い悩んでも仕方ないですよ」
 意味のない馬鹿な言葉だと、我ながら呆れ返るような慰めを紫炎は口にした。あまりに苦しそうな白炎の表情に、言わずにはいられなかったのだ。
「……ふん。やっぱり紫炎ってさ、五騎士の中では破格に大甘な人間だよな……。ゼアもよく言ってたぞ。紫炎はそのうちストレスで胃を壊すぞってさ」
 憎まれ口を叩くように、クォーレスはつんと顎を上げた。僅かに尖った唇がどこか悪ガキのように見える。抱えていたものを紫炎に話したことで、少しすっきりしたのかもしれない。
「余計なお世話です」
 僅かに落ち着きを取り戻したように見える白炎に、くすりと紫炎は笑って反論をする。
 その背後で、ぎぃいと静かに扉の開く音がした。
 緋炎の騎士が皇宮から戻ってきたのだと ―― 部屋に流れ込んできたその気配で、分かった。


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2006.10.13 up