▲ 第3章-------<3>----------------▼
誰かが自分を見ている。
この身にまとわりついて離れない、蜘蛛の糸のような視線。一瞬にして、すべてを奪ったあの白い瞳が、また ―― 。
イディアはふと、閉じていた瞳を見ひらいて空間の一点を見据えた。そこに嫌悪すべきものがあるように、翡翠の瞳が苛立たしげに揺れる。
「いつまでも……大切なものを奪い続けさせはしない……」
漆黒の水晶を静かに睨み据え、イディアは自分自身に言い聞かせるように呟いた。
彼の銀色の髪がそれ自体が光源であるかのように淡い輝きを放ち、ゆうらりとこの空間全体をつつみこむように広がってゆく。
「 ―― !」
ぶわりと、風もないのに白銀の髪が、薄藤のローブが、たなびくように宙に舞った。まるでイディアの言葉を嘲笑うように、黒水晶から光が放たれていた。
誰の手にも触れられぬ場所に置かれた漆黒の水晶球は、『カイルシア』の魔力の結晶だった。
それは、アルファーダを死した大地に変えた忌まわしい力。そして……イディアがこの世に生を享けてからずっと、彼を牽制し続けてきたおぞましい魔力。
「……あのときアルファーダを犠牲にする必要などなかった。おまえが見た予知は、私が生まれる以前のものだった。……おまえと私が手を携えることで、その未来は変えてゆけるはずだったのに……」
怒りのためか、それとも悲しみのためだろうか。そう語るイディアの唇が、僅かに震えている。
「この塔が……おまえが無くなれば、アルファーダは再び自然の豊かさを取り戻す。私はもう大地の……生命の嘆きを聞きたくはない」
イディアはゆうるりと瞬きをひとつすると、心を決めたように、空間に浮かぶ黒水晶に魔力を込めた眼差しを向けた。
己の内に眠る強大な魔力を解放し、あれを破壊する。そうすればアルファーダは……この死した世界は再び生命の宿る場所になる ―― 。
そうすることが反対側の世界レミュールにどんな影響を与えるか。イディアは知り過ぎるほどに知っていた。
けれども、あえてそれを行うつもりだった。
三百年前、カイルシアはそれをやったではないか ―― !
あとほんの僅か。黒水晶を睨むこの瞳にさらなる魔力を込めれば、すべては終わる……。
その想いに促され、魔力の奔流を抑えていた心の箍がはずれようとしたその刹那、イディアの動きが一瞬とまった。
翡翠のように煌く双眸が驚愕に見開かれ、背後を振り返る。
「 ―― 生命が……消えた?」
激しい喪失感と、言いようのない哀しみにイディアは固く唇を噛んだ。
彼にとって何よりも大切なアルファーダの生命。その一部が失われたような気がして、ひどく心が痛い。
「いったい誰が……?」
嘆くような問いかけに、けれども応える者はここにはいない。
イディアはちらりと黒水晶をみやり、そして深く嘆息するようにかぶりを振った。
ふわりと、風を孕んだ髪が静かに揺れる。その長く伸びた白銀の髪が静止するのも待たずに、その場所からイディアの姿は消えていた。
カイルシアの水晶を破壊することよりも、突然消えてしまった生命の感覚のほうが、彼にとっては重要だった。
太陽に向かって伸び上がる巨大な光の柱のように、天高くそびえる塔の前で、イファルディーナは地上に降りた。
今まで彼らが通って来た場所は、荒れ地といえども僅かに草木は存在していた。
しかし、流月の塔の周囲にはまったく何も存在していない。黄金色の乾いた砂が散らばった、広大な砂漠の中に塔は建っていた。
「……月の森がなくなってる。前に一度だけイディア様と来た時は、この彫刻を境にしてこっち側に森が在ったんだよ」
信じられないというようにリューヤは呟いた。残っているのは、まるで流月の塔と砂漠を隔てる門のように置かれた一対の、鳥を形どった彫刻のオブジェだけだった。
「…………」
ティアレイルは塔を見上げ、嘔吐感を伴う不快さに頬を歪めた。他の四人も、どこか居心地が悪そうに互いに視線を交わす。
みんながこの塔が発する異常な空気を感じていた。何か嫌な空気がこの辺りに渦巻いているように思えて仕方がなかった。
何が悪いのかは分からない。視覚的なものだけで言えば、流月の塔は本当に、とても美しい建造物だった。
太陽にきらめく真珠色の壁面も、凛と佇む聖木のような毅然としたそのシルエットも。普通ならばこれを見る者すべてに深い感銘を与えずにはおかないだろう。
けれども、その周辺をおおうように存在する異常な雰囲気が、その視覚的な美のすべてを損なっていた。
「綺麗なのに……なんだかヘン」
セファレットはどこか息苦しそうに胸のあたりを抑え、眉をひそめた。
こんなにも胸がざわつくのは、この塔が自転停止のときにどんな事態をこのアルファーダにもたらしたのか、知ってしまったからなのだろうか? それだけにしては、あまりにも嫌悪感がたちすぎる。
「本当だね。綺麗すぎて……逆にグロテスクに見えてくるよ」
ルフィアは自分の心に湧き上がる不快感をどう表現していいのか考えあぐねたように、軽く頭を振った。
自分は魔術の存在等を知ることは出来ないけれど、ここには何か自分にとって嫌悪すべきものが存在する。そう思えて仕方がなかった。
「おいっ、ティア!?」
ぐいっと肩を抱くように、アスカは幼なじみの目を覗き込んだ。そうせずにはいられないほど、ティアレイルの顔色が悪かった。
このままいきなり死んでしまうのではないかと思うような、ひどく白い顔。けれども、アスカが覗き込んだその翡翠の瞳だけは、しっかりと強い意志を宿していた。
「……だいじょうぶか?」
あまりに心配そうなアスカの声に、ティアレイルは血の気が完全に失せたように蒼白になったその頬を、笑むように引きつらせた。
「ああ。私は、大丈夫だよ。ただ……分かってしまった」
ティアレイルは、ふうっと目を細め、睨むように真珠色に輝く流月の塔を眺めやる。
「この塔は……今なおアルファーダの『生命』を吸い続けている。おかしいと思っていたんだ。ここが滅んでから数百年も経つというのに、まったく自然が回復していないのは……。でも、再生しようとする自然の生命力をこの塔が奪ってしまっているのだから、あたりまえだ」
嫌悪感に、ティアレイルの語尾が揺れた。カイルシアがそこまでしてレミュールを守っているのだということに、やりきれない滑稽さすら感じる。
「この塔がアルファーダの『生命力』で、その効力を失うことなく動いているのだとすれば、その乱れを修正するって……どういうこと?」
恐ろしい予感に、セファレットは微かに震えていた。
三月を支えるこの塔の魔力が弱まったからこそ、月が落ちてこようとしている。だから自分達は、月の支柱である『流月の塔』の魔力を修正し、再び三月のバランスを保つためにここまで来たのだ。
彼女は、塔の力をイディアが弱めているのだと思っていた。だから、彼を説得すればいいのだ。そう思っていた。けれども ―― 。
塔の弱った力を修正するということは、再びその魔力を強めることになる。それが意味するものは、あまりに恐ろしいものである気がした。
アスカはセファレットを見やり、そして晴れた夜空のような瞳に研ぎ澄まされた刃を宿し、流月の塔を見上げた。
「この流月の塔を再び発動させる、ということだろうな……」
低く呟く声が、砂の海に溶けて消える。
ショーレンは軽く眉をあげた。
「それじゃあ、アルファーダを再び死の大地にするってことだな」
腹立たしげに両手で前髪をかき上げる。
ショーレンは偽善者ではなかったが、そうまでしてレミュールを守ることの意義を、見つけることが出来なかった。
確かにレミュールには大切な人もたくさんいるし、生まれ育ったところなのだから、できれば救いたい。
けれどもアルファーダにだって『生命』はある。そして、僅かな期間とはいえ、自分はその『生命』と親しく接していたのだ。
「……アルファーダの犠牲の上にレミュールが存在しているのだということを知らず、贖罪も感謝もせずにのうのうと暮らしているレミュールの人間達は、確かに罪悪かもしれないな。そして……それを俺たちにさせたカイルシアも」
アスカはショーレンを見やり、きっぱりと言う。それは、ショーレンと同様の考えだということを表していた。
一方を守るために、もう一方を完全に切り捨て犠牲にする。そんなことが、正しいやり方であるはずがなかった。
「月の森がなくなっちゃったのは、この塔のせいなのか?」
リューヤは唇を噛むように、ショーレンを見上げた。
「……ああ。たぶんな」
苦しげに、そう応える。リューヤは責めるように塔を見上げた。
「何で、こんなものがあるんだよ。カイルシアって奴は、何なんだよ!」
いくら怒っても怒り足りないというように、リューヤは地団太を踏む。これのせいでいつもイディア様は苦しんでいたのだ。そう思うと許せなかった。
「やはり……おまえたちはイディア様に害を為す存在だったな」
ふいに、怒りを押し殺したような声がティアレイルたちの耳朶を打った。
聞き覚えのあるその声に、驚いて周囲を見渡した彼の目に、二つの影がはっきりと映る。ゆるやかに空間が割れ、その中からそれは現れていた。
おぼろな影が少しずつ色彩を帯び、完全な人になる。それはトリイの町の二人。彼らがアルファーダに来て初めて出逢った人間。小夜と左京だった。
「友人探しだなどと、よく言ったものだ」
左京は鋭い眼光を浮かべ、アスカを睨み据えた。
彼らがトリイの町を出て中央に渡ったあと、自分たちが感じるのは不穏な気配ばかりだった。そしてとうとう、イディアの聖殿が焼けた。
優しい眠りの夜が引き裂かれたそのとき、遠くに在った自分たちは何もすることが出来ないまま、イディアを失ったのだ。
そう思うと、目の前のアスカたちが憎らしく思えてくる。
「結果的にはそうなったみたいだな……」
それを否定するつもりはアスカにはなく、深い溜息がこぼれおちた。自分たちがここに来たというその一事だけで、イディアにとっては最大の害だったのだ。知らなかったなどと言い訳は出来なかった。
「……ここは『生命』を喰らい尽くす場所。私たちアルファーダの人間など、よほど強い生命力がなければ一瞬にして消滅してしまう。塔が……ここに在るだけでそうなのです。その魔力を再び強化し、発動させるようなことになれば、このアルファーダは二度と再生出来なくなってしまいます」
小夜はその黒い瞳に涙を溜めて、必死になって訴える。
何百年も掛けてイディアが育んできた、アルファーダの僅かな自然たちを、どうしても彼女は守りたかった。
その小夜の黒珠のような瞳を見つめ返し、ティアレイルは哀しげに息をついた。
「アルファーダに存在する『生命』は、すべて虚構(ではないのか? 本当は……ここは今なお、命あるものなど存在しない、死の大地なのではないか?」
とても穏やかな口調で、しかしティアレイルはおそろしいことを言っていた。
今こうして自分の目の前にいる小夜も、左京もリューヤも。そして町にいたすべての人々が、イディアによって作り出された虚構ではないのだろうか? そうティアレイルは言ったのだ。
はっと、小夜は目を見開いた。
今にも泣き出しそうに表情を歪め、震える唇から悲痛な吐息を漏らす。
やはり彼は……イディアに良く似た感覚を持つこの青年は、そのことに気が付いてしまった。そう思うと哀しくなった。
けれども、そうだと認めることは小夜には出来なかった。このアルファーダに住む者たちを虚構というには、それはあまりに切なすぎる。
「いいえ……。いいえ。違います! 確かに……イディア様はその御力で、死に絶えたこの大地に緑豊かな自然を育まれ、町を造られました。そして……そこに住むものは……あのときカイルシアの閃光で命を失った者たちです。でも、魂はここに在るのです。だから……虚構なんかではありません……」
囁くような、けれども耳許に流れこんでくるような透明な声音で、小夜はそう言った。どうしても分かってもらいたかった。アルファーダを再び死の大地にはしたくない。それだけが、今、彼女を動かしていた。
「……アルファーダの人が、私たちを『幽霊』って呼んでいるのは、なんだか皮肉なものだね」
ルフィアはやるせなさげに唇を噛んだ。本当の幽霊は自分達レミュールの人間ではなく、アルファーダの方だったのだ ―― 。
「それでも……私たちはこうして生きているんです。お願いっ! 塔の魔力を発動させないでください。イディア様を、苦しめないで……」
すがるように、小夜はティアレイルを見やる。あまりに哀しげで、そして純粋な想いに、ティアレイルは瞳を伏せた。
自転停止の真実やイディアのことを知ってしまった今、自分だって流月の塔を再び発動させたくなどなかった。ましてやイディアが悪いなんて思っていない。
けれども、脳裏に浮かび上がる予知。紅蓮の焔に捲かれ、助けを求めるレミュールの人々の顔が……彼の心を惑わせる。
自分がどうすることで最良の結末を迎えることができるのか。今のティアレイルには分からなかった。
魔術派の象徴と人々に畏敬され、天才的な魔導士だなどと謳われて ―― けれども、けっきょく自分はそんな彼らを助けるすべを何一つ持っていないのだということが、ティアレイルはひどく悔しいと思った。
ふと、寒気がした。全身が総毛立つような不快で厭な感覚にティアレイルは驚き、そして気が付いた。
「 ―― 早く、彼女を連れて町に帰れっ!」
ティアレイルが鋭い叫びを上げるのと、少女の体がガクンと崩れるように地に倒れたのは、ほとんど同時だった。
艶やかな黒い髪がふわりと宙を舞い、少女の白い顔にふりかかる。
ティアレイルには、彼女の持つ優しく哀しげな『生命力』が流月の塔に吸い込まれて行くのが見えるような気がした。
「小夜っっ!!」
慌てて左京は少女を抱き起こした。けれどもすでに、彼女の『生命』はそこにはなかった。あでやかな黒髪と白い頬。そして清楚な緋袴の色彩が拡散し、ゆうらりと、小夜の体が存在そのものを失ったように風の中に溶けてゆく。
それを ―― 左京は茫然と見つめていた。
「……いったいどれだけの生命を喰らえば、この塔は動きを止める? このアルファーダすべてがほんのわずかな再生さえも出来なくなるまでか? それとも、あんたたちのレミュールまでも喰らい尽くした時なのか?」
左京の強い双眸に、涙が溢れた。
自分たちが町から出れば、こうなることはわかっていた。『イディア様の守護』が薄い場所に行けば、この塔の餌食になる。それは、自分たちが本来実体の無い、魂だけの存在であると知っていた小夜と自分には、わかりきっていた。
それでも、どうしても塔の発動を止めたくて。大切なイディア様を救いたくて……。その魔力で守られたトリイの町から出て来たのだ。しかし ―― 。
「イディア様の優しさが、我々を塔の魔力から守ってくださっていた。だが、おまえたちが流月を発動させなくとも、アルファーダは滅びるかもしれん。あの方の御心が憎悪で満たされていれば、我々は生命を守る壁を失うことになる。そうすれば……」
存在すらなくなった少女の名残を抱くように、左京は自分の両腕を胸に引き寄せる。そして、唇を噛むように立ち上がった。
「それが目的で、おまえたちはここに来たのか? イディア様の町が増えれば、それだけこの塔が吸収できる『生命力』が減る。だから……イディア様を憎悪の渦に堕とし、町を消滅させるつもりだったのか?」
左京はレミュールの人間たちを睨み据えるように視線をめぐらした。そうと分かっていれば、どんなことをしてでも……自分の命をかけてでも、彼らをイディアのいるこの中央には入らせなかったものを……。
「だが……滅ぶのは、どっちかな」
左京は怒りと悲しみの入り交じったような笑みを口許に刻んだ。
「町が消滅するよりも早く。イディア様が憎悪に駆られ、この塔を破壊してしまわれれば、滅びるのはアルファーダだけではなく、レミュールも同じだ」
狂気に魅せられた人間のように高く哄笑すると、左京は塔と砂漠を遮る唯一の彫刻を跳び越えた。
まるでこの塔の恐ろしさ、おぞましさを見せつけるように、カイルシアの魔力に満たされた空間へと、その身を投げる。
誰かが止める間も、なかった。
一瞬にして、左京の姿がそこから掻き消え、その生命力が貪欲に命をむさぼる塔の中へと吸い込まれていく。
「いやーーーーっ!!」
今までそこに在ったものが、そこで話をしていた人が。とつぜん消失してしまうという恐怖。その光景を目の当たりにして、セファレットは悲鳴を上げた。
「……どうして? 嫌だよ。こんなの。私たち何のためにここに来たの……?」
ぺたりと地面に座り込み、しゃくり上げるように訴える。
あまりにも、それは衝撃的だった。自分たちが来たことでイディアを追い詰め、そして小夜や左京という存在をも消してしまったのだ。いったい何のために自分たちはここに来たのか? それは皆がもった共通の疑問だった。
「カイルシアが私たちをここに導いたこと。それはアルファーダを滅ぼすのと同じことだったのかもしれない……」
座り込んだセファレットの肩に手を置き、ティアレイルは静かに言う。その瞳は己を責めるように沈痛な翳を負っていた。『D・Eに行け』というカイルシアの言葉を皆に伝えたのは、他でもない自分だったのだから。
「…………」
アスカは左京が消えた場所をじっと見つめ、唇を噛み締めた。
「あいつが……左京が言ったことは正しいかもしれない。イディアがこれ以上町を造らないように、俺たちはカイルシアにここに導かれたのかもしれない」
やりきれないというように、アスカは足許の砂を思いっきり蹴り上げる。自分たちは、カイルシアの手のひらで踊らされていたようなものなのかもしれない。そう思うと腹が立った。
「……小夜さんも左京も……死んじゃったのか? な……んで? なあ……アルディス、なんでだよっっ!?」
何がなんだか分からないというように、リューヤは叫んだ。
イディアから使いを頼まれて、何度も小夜や左京とは会ったことがあった。
二人ともとても優しくて、そしてイディア様のことが本当に大好きで、自分にもいろんな話をしてくれたのに ―― 。
その二人がどうして消えてしまったのか。何故まったくその人の『存在』さえも感じられなくなってしまったのか、リューヤには分からなかった。
ゆうるりと優しく穏やかな時間が流れているこのアルファーダに、今まで『死』というものはなかった。
もちろん、言葉としては知っている。イディアが繰り返しそれの哀しさを教えていた。
けれども……実感するのは初めてだった。なぜならイディアは、アルファーダに息づく生命たちを、決して損なわせなかったのだから……。
「この塔が、彼らを呑み込んだ……」
ショーレンはリューヤを守るようにしっかりと抱き締めた。
この禍々しい流月の塔がこの子の生命を奪わないように。そして……その心がこれ以上傷付かないように ―― 。
ショーレンは二つの生命の消滅をその目で見て、はっきりと心に決めていた。
―― 流月の塔は、発動させるべきではない……と。
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