Misty Night 番外編 ショートショート4 |
朝ごはんが出来たという穏やかな祭司の声が聞こえて、セレアは鞄と上着を持って部屋から出てきた。 「祭司様、手伝えなくてごめんなさい」 今日はすこし寝坊してしまったので、セレアはいつものように手伝えなかったことを詫びる。なんとか町の学校へ行く支度は整ったが、黒く綺麗なその髪にはまだ少し寝癖がついていた。 「はは。そんなことは気にしないんだよ。子供はもっと甘えていいんだから」 「……はい」 照れたようにはにかむ少年の表情に、初老の祭司はにこにこと笑う。そうして寝癖を直してあげるようにセレアの頭を撫でてやってから、ゆったりと食卓へいざなった。 ほわほわと湯気がたゆたう温かいコーンスープと、バターの香りが食欲をそそる少し固めのパン。採れたての野菜と少しの豆が入っただけのサラダ。食卓に並べられたものはこれだけだったけれど、卓についた二人の表情は明るく、とても楽しそうだった。 「いただきます」 「ああ、ゆっくりよく噛んで、たくさん食べるんだよ」 律儀に手を合わせてから食べ始めた少年に笑顔で応えながら、祭司は最愛の我が子を見守る父親のように幸せそうにセレアを眺め、そうして自分も同じように食べ始める。 この平穏で幸福な日々がずっと続いていくれれば良いと、心の底から祭司はそう思う。 先日この少年が魔性としての本性を初めて人前で発現してしまった際には、その場に居てくれた聖獣のリュカが相手の記憶を消し去ってくれたようだった。それがなければ、今ごろ教会は自分たちを放っては置かなかっただろう。 今は黒真珠のような輝きを宿しているセレアの黒い瞳は、本来は魔族特有の力にあふれた深い紅の瞳なのだ。自分がこの少年の魔力を封じていられる間は良いけれど、それが無理になったときにはどうなってしまうのか……。幸福を感じる傍らに、その不安は常に付きまとった。 成長するにしたがって日に日にセレアの内にあふれる魔力が増していくのが、祭司にはよくわかっていた。 だからといって、この幸福を手放すつもりなど祭司には毛頭ない。この子と出会い、育てると決めたあの時から、己の力の及ぶ限り守ると決めたのだから。 「リュカ、無事に帰れていればいいね」 ふと、セレアはスープを飲む手を止めて、思い出したようにそう言った。 あのとき、聖獣はとつぜん二人の目の前で空にかき消えてしまったのだ。最初はもちろん心配したけれども。その直前に「帰りたいと願えば迎えに来てくれるかもしれない」とも話していたので、その"大好きなレイ"のところに帰れたのではないかとも思えた。 「きっと大丈夫。ここから消えたのは、あの子の言っていた"レイ"さんのところに帰ったからだよ」 やんわりと、セレアを安心させるように祭司は微笑みをたたえて静かな声音でそう断言する。 「うん。……リュカの言っていたそのレイさんって、魔族なんだよね。……僕と同じ」 そんな祭司を見やる少年の綺麗な黒い瞳が、ほんの少しだけ切なげに細められた。 自分が"人間ではないかもしれない"ということはとうに分かっていた。けれども、あの時。祭司を害しようとする男の存在を見た瞬間に沸き上がった強い殺意。そして己の内側から一気にふくれあがるように溢れ出した大きな魔力に、セレアは自分が何者なのかを知った。 自分が魔族と呼ばれる存在だという事も。魔族自身がそれぞれ固有するという己の存在を表す"本来の名前"があることも、その時に分かった。 もちろん、自分には祭司がつけてくれたセレアという名がある。だから今は"本来の名 「セル……セレア。リュカくんが言っていたのだけれどね。魔族である"レイ"さんと聖獣であるリュカ君はもう100年以上も一緒に暮らしているんだって。そしてなんの不都合もないって」 祭司はゆっくりと席を立ち、静かにセレアのもとに歩み寄った。 「だから、種族など関係ないんだよ。お互いがお互いを大切に思っているなら、それで良いんだ」 暖かな祭司の大きな手がセレアの黒髪を優しく撫で、そうしてふわりと抱きしめる。セレアは一瞬目を見開き、そうしてゆっくりと頷いた。その表情はどこか泣き出しそうで……けれども幸せそうに笑んでいるようにも見えた。 「レーイーーっ!! おっきろーっ!!」 バタバタと青年の顔の上で暴れながら、リュカはこれでもかというほど大きな声で叫んだ。今日はザレードの北側にある隣町キルシュに連れて行ってくれると約束していたのに、なかなか起きてこないレイフォードを呼びに来たのだった。 「……リュカ? また……迷子になった?」 うっすらと目を開けた先に映った真っ白な聖獣の姿に、レイフォードはぼんやりと呟いた。そうして、はっと何かに気付いたように慌てて身体を起こす。 「まったく、人の顔の上で暴れるなと何度言ったらわかるんだ、このバカ聖獣は」 そう言いながら、己の顔から転がり落ちたリュカの頭を軽く小突く。まるで何かをごまかすような青年のその態度に、リュカは元々まんまるな目をさらに丸くして、そうして「ははーん」と楽しそうに笑った。 「レイ、いま、寝呆けてたでしょ?」 たたっとレイフォードの左肩に駆け上り、そこから青年の頬をつまむように小さな手を動かす。さっき目覚めた時に発せられた言葉は、どこか子供のようだった。この青年が寝ぼけた姿なんかを見るのは初めてで、嬉しいような楽しいような、とにかく笑顔になってしまうリュカだった。 「気のせいだ」 つんっと顔をそむけて、レイフォードは立ち上がる。その弾みでリュカはぽてんとベッドの上に落ちた。 「いいから階下 「うんっ。ダスト、コーンスープつくってたよ。おれ、あれ好きなんだぁ。味見しようとしたら怒られたけどさ」 にこにこと笑いながらベッドから跳び下りると、リュカは「早く来てね」と言ってから部屋の外に駆け出て行く。その姿を見送ってから、レイフォードは深く息を吐き出して参ったというように天井を仰いだ。 「危ないところだった。あいつに気付かれたら、たまったもんじゃない」 確かに自分が寝ぼけて先ほどの言葉を口走ったという自覚はある。その言葉から類推して"セレア"と自分を結び付けられる頭をリュカが持っているとは思えないが、用心に越したことはない。そうレイフォードは思った。 「それにしても一体なんなんだろうな、これは。……ふん。鶏が先か、卵が先か」 100年ちょっと前の雪の日に。初めてリュカに出逢った時に感じた妙な懐かしさの理由がわかったような気がして、レイフォードは不揃いに揺れる黒髪を両手で後ろにかきあげる。忘れていたわけではないけれど、あまりに遠すぎる記憶だ。幼いころに一度だけ会った聖獣とリュカが同一だったなどと、これまで考えることさえなかったのだ。 「まあ、あいつには知られないようにしないとな」 絶対に、自分がリュカの知る”セレア"であることを知られないようにしようと決意を新たにして、レイフォードは身支度を始めた。 「……コーンスープか」 先ほどリュカが言っていた言葉を思い出し、レイフォードはふっと笑みを浮かべた。懐かしく、あたたかな優しいスープの味を思い出せるような気がして、深紅の瞳がどこか柔らかな光を宿す。 「種族なんか関係ない……か。そういえば、最初に言ったのはあの人だったか」 遠い記憶の懐かしい声。それを思い出すように目を細め、窓の外を見やる。自分が本来の"レイフォード"という名を冠して生きるようになる前の、今から思えばそれはほんのわずかな時間だ。幾百年もの永い時を生きる魔族からすれば、人の命は玉響のように儚く短い。 それでも、与えられた暖かさは残るのだと、レイフォードは知っていた。 「ふふ。センリも、シエナも同じようなことを言っていたっけな」 大きく伸びをするように、ゆっくりと深呼吸をする。彼らのことを思い出しても痛みではなく、暖かさが満ちるのが心地よかった。 そうして、階下で「早く来てよ」とワアワア喚くリュカの声に急かされるように部屋を出る。 「あのバカ聖獣も、そういや言ってたな」 くくっと肩を揺らすように笑いながら、レイフォードはゆっくりと階段を下りて行く。ダストの作ってくれた朝食をとり、そのあとは、あのうるさい聖獣との約束どおり町に連れて行くことになるのだろう。そう思うと面倒くさい気もするが、あのバカの我儘をきくのも楽しいと思う自分もいて、思わず苦笑してしまうレイフォードだった。 キルシュの町は、ザレードに比べると人口3割にも満たない小さな小さな町だった。 そんな小さな町に何故リュカが来たかったのかと言えば、"苺"が食べられると聞いたからだ。ザレードのお店で売っていた小さな赤い果実。仲良くなったお店の人にそれをひとつもらった時に、あまりの美味しさにびっくりした。そしてたくさん食べたいと言ったリュカに、お店の人が教えてくれたのだ。隣町のキルシュはここらでは一番の名産地だよと。 だからレイフォードにいっぱいお願いして、ようやく連れてきてもらったのだった。 「ケイトさんが言うには、ここでは『いちご狩り』っていう行事もあるんだって。そこではお金を払えば三十分間食べ放題なんだよ」 レイフォードの左肩に座りながら、わくわくと楽しそうにリュカは言う。それだけの時間を食べていられるならば、どれだけたくさん味わえるだろうかと想像するだけで嬉しい。 「……俺に、その行事に参加しろというのか? おまえは馬鹿なのか? いや……馬鹿だったよな」 にこにこと笑顔を崩さないリュカに大きなため息をついて、レイフォードは呆れたように頭を振った。 ヴァンパイアである自分が、なぜ真昼間からそんなことに付き合わなければいけないのかと思う。それよりも、隣町の人間が自分のことをヴァンパイアだと知らないからといっても、この深紅の瞳を見ればすぐに魔族だとわかるのだ。 「そうだ! レイって目を黒くしたり変装できないの?」 名案だとばかりに、リュカは手を叩いて喜んだ。夢だったかもしれないけれど、魔族であるセレアの瞳が黒から深紅へ、そしてまた黒に戻ったの見たことを思い出したリュカは、力の強い魔族であるレイフォードにはそれが可能なのではないかと思った。 「そうしたら、レイも普通に人と付き合えるじゃな……痛った~、なにすんだよ、レイ」 嬉しそうに話すリュカの頭に、ごつんと、大きなげんこつが降ってきていた。 「おまえが馬鹿を言うからだ。何で俺が自分の姿を偽る必要がある? するわけないだろうが」 心底嫌そうな表情のレイフォードを見て、リュカは頭をさすりながら口を尖らせる。 「ちぇー。レイってば融通が利かないなぁ」 人の姿を装ってまで人の世に溶け込む気はないという。人間が好きなのにそこは譲らないんだなぁと、リュカは不思議に思いながらも無理強いするつもりもなかった。 「じゃあ、いちご狩りは出来ないの?」 「おまえだけで行ってくれば良いだろ。聖獣ならだれもが歓迎するさ。俺はその辺を散歩してくる」 肩に乗っていたリュカを道端の草むらにぽいっと放り投げると、レイフォードは切れ上がるようにあざやかな笑みを浮かべて立ち去ろうとする。リュカは慌ててレイフォードの肩に再び駆け上った。 「一緒が良いんだもん。レイにもいちご、食べてほしいんだよぉ。本当においしいんだから!」 「ここまでついて来てやったんだから、それで我慢しろ。……そんなに食べてほしいなら、土産で持ってくればいい」 しょんぼりしてしまったふわふわの真っ白な頭を撫でてやりながら、レイフォードは可笑しそうに言う。リュカは、残念そうにため息をついて頷いた。 「……わかったよぉ。じゃあ、たくさん持ってきてあげ ―― 」 「わーっ! レイさんと、リュカだっ!」 リュカが一緒に行くのを諦めてレイフォードの肩から降りようとしたその瞬間、嬉しそうに自分たちを呼ぶ子供の声が聞こえた。 「ええっ?」 とつぜん名前を呼ばれて、二人は驚いたように声のする方に顔を向けた。そこには、にこにこと笑いながら手を振って近づいてくる子供の姿があった。それは見覚えのある少年の顔で、思わずリュカとレイフォードは顔を見合わせる。 「確か、オリバーだったな。そういえば、キルシュは"おまえたち"の町だったか」 少年が目の前に来ると、レイフォードは思い出したように苦笑した。以前、祭りの夜に"ヴァンパイア屋敷"とは知らずに菓子をもらいにやってきた子供たちの中の一人だった。帰りは夜遅くなったので、レイフォードが彼らをこの町に送ってきたのだ。 「うんっ。あのときは、ありがとうございました。すごく楽しかったもん。あのあと父さんたちにはいっぱい怒られたけど、レイさんとの約束は誰も破ってないからね」 にっこりと笑いながら、少年は任せろと言わんばかりに胸を反らせた。ヴァンパイア屋敷に行って彼と出会ったことは、オリバー、リーラ、アルトだけの、とっておきの楽しい秘密だった。そのあとはたくさん本を読んで、ヴァンパイアや魔族について調べたりもしたのだ。だから久しぶりに会えて、オリバーはとても嬉しかった。 こうして太陽が燦々と出ている昼間にヴァンパイアが外に出ていることは驚きだったけれど、やっぱり本の知識だけでは当てにならないのだとオリバーは思う。 「ところで、今日はここで何してるの?」 魔の証でもある紅い瞳を静かにこちらに向ける青年と、まんまるな黒い瞳で嬉しそうに自分を見ている聖獣に、オリバーはそう訊ねた。理由もなくこの町を訪れる者は少ないし、それがヴァンパイアと聖獣のコンビなら尚更だ。 「いちご狩りだよっ。でも……レイは行かないんだって」 魔族だから行かれないんだというリュカの言葉に、オリバーは満面の笑みを浮かべた。 「おれの家にも小さいけどいちご畑があるんだよ。今日は親が出かけてるから、いちご狩りはお休みなんだけど、ちょうど良いよねっ」 そう言うが早いが、レイフォードの腕を引くように一気に走り出した。 休園だからレイフォードたちが居ても気にする他人は誰もいない。嬉しそうに、オリバーはそう言いながら二人を自分たち家族が世話をしている苺畑に案内する。そこは、確かに周囲にある他のいちご農園に比べると小さな畑だったけれど、大粒で真っ赤な苺がたくさん実って、甘やかな香りが漂っていた。 「うわー。美味しそう。食べていいの?」 「もちろん。たくさん食べて」 飛び上がらんばかりに喜んでいる聖獣に、オリバーは笑顔で言う。そうして、掴んでいたレイフォードの腕をぱっと放してから、にっこりと笑った。 「レイさんもね。この前のお礼だからっ。ゆっくりよく味わって、たくさん食べてね」 「…………」 少し驚いたように、けれどもやんわりと、レイフォードは少年を見やった。子供は本当に無邪気なものなのだと可笑しく思う。たった一度だけ、ほんの少しの交流があったに過ぎないのに。自分がヴァンパイアと知ってもなお、こうして懐いてくるのだから面白い。 「ありがとう」 ぽんっと、オリバーの頭に手を置いて、レイフォードは笑う。そうしていちご畑の方へと足を向けた。 「レイ~。これ美味しいよっ!」 リュカはそう叫びながら、一粒のいちごを大切そうに両手に抱えてレイフォードの足元まで走り寄ってくる。そうして「食べてみて」と言わんばかりに嬉しそうにそれを差し出してきた。 しっかりと、ひとくち齧った跡のあるいちごを ―― 。 一口食べてみたらあまりにも美味しくて、もしかしたらこれより美味しい苺はないかもしれないと思った。だからリュカは、"これ"をレイフォードにも食べてもらいたいと思ったのだ。 「……ったく」 だからと言って食べかけを渡す奴があるかと悪態をつきながら、レイフォードは足元で腕を伸ばすリュカの小さな身体を抱き上げて顔の前に持ってくる。 そうして、ぱくりと。リュカが手に持ったいちごをそのまま食べた。 「へっ!?」 自分の食べかけのいちごを本当にレイフォードが食べてくれるとは思っていなかったリュカは、思わず素っ頓狂な声をあげる。 「返せと言われても、もうないからな」 にやりと、レイフォードは笑った。 その表情があまりにも綺麗で。思わずリュカは見惚れてしまう。 神の泉から帰ってきて以来、レイフォードはこういう明るい表情をすることが増えたとリュカは思う。以前はもう少し、翳のようなものが見え隠れしていたのだけれど。それが少しずつ消えていっているような気がした。それが何故なのかリュカには理由がわからなかったけれど、とても喜ばしい変化なのだと思えた。 「言わないもんっ。だけど、今度はレイがおいしそうないちごを選んでよ」 宙に浮いた足をぷらぷらと揺らしながら、リュカはまだまだたくさんの果実が実ったいちご畑を見やる。レイフォードは軽く笑って、まっしろでふわふわの聖獣を肩に乗せてやった。 「本当に二人は仲が良いんだね」 オリバーが楽しそうにそう言うと、リュカは両手をあげて「うんっ」と元気いっぱいに叫び、レイフォードは苦笑するように「腐れ縁だ」と言った。 その様子がおかしくて、再びオリバーは笑う。やっぱり、大人たちが言うほどザレードの町のヴァンパイアは悪い人ではない。そう思う。 「お互い大事に思えるなら、友だちになるのに種族なんか関係ないんだね」 にっこりと、オリバーは思いついたようにそう言った。 「そう、かもな」 青年はどこか懐かしそうに空を見上げ、そうしてゆうるりと紅い瞳をオリバーに向ける。 この無邪気な少年もいつかは現実を見る大人になるだろう。その時も今のようなことを思えるのか否か。それはレイフォードにもわからない。ただ、今その言葉を聞けたのが少し嬉しい気がした。 「さて、じゃあもう少しだけ苺を食べようか」 そう言って、いちご畑へと足を踏み入れる。 「さんせーい!」 「おれ美味しいいちご分かるから、教えるね」 リュカは青年の肩の上ではしゃいだように足をばたつかせ、オリバーはにこにことレイフォードの隣を歩く。 そうして和やかに楽しく。ヴァンパイアと聖獣と人間。異なる三人の不思議ないちご狩りはリュカが食べ過ぎて動けなくなるまで続いたのだった。 「また、遊びに来てね」 おなかがいっぱいになって眠ってしまったリュカを右手で抱えた青年に、オリバーは笑顔で言った。もっと仲良くなれたらいいのにと思う。けれども、町の外にはなかなか出られないのが子供のつらいところだった。 レイフォードはそれには応えずに、ただ少年の頭をぽんぽんと撫でた。 もう、この町に来るつもりはなかったが、それを彼に告げるつもりもなかった。 「じゃあ、な。今日のことも皆には秘密だ」 人差し指を軽く唇に当てて、レイフォードは静かに笑う。 そうして、ふわりと宙を舞うように、少年の目の前からゆうるりと姿を消した。 最後に……「元気でな」という優しい声が聞こえたような気がして、オリバーは長いあいだヴァンパイアの青年と聖獣が消えた青い空を眺めていた。 いつかまた、会えることを信じて ―― 。 その、透きとおるような青く美しい春の空に、優しい風が流れていくのが見えたような気がした。 .........Misty Night番外編『玉響の時』 完 |
第五夜「記憶の森」の後日譚&リュカとレイフォードの楽しい日常の物語を描きたくていちご狩りをさせてみました。楽しんで頂けると嬉しいです。 最初は出てくる予定ではなかったオリバーが出せとうるさいので、本編に先だち閑話1に続いてここで登場することに(笑)近いうちに本編にも登場する予定です。 レイフォードの名前についても少しここで触れていますが、詳細は本編で出てきますので、それまではこの程度でご容赦を♪ |
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